漫筆(まんぴつ)とは、その時どきの気分次第で、とりとめのないことを気楽に書いた文章を言います。
実感できない好景気
例年、2月は一年でもっとも寒い月のはずですが、暖冬の東京では、もう公園に菜の花が咲いています。
気象庁によると、130年間の観測史上、もっとも遅い「都心の初雪」は2月10日だったそうですが、今年は、その記録を更新したようです。まさに、記録的な暖冬ですね。
暖かい冬は過ごしやすくて歓迎ですが、「水不足になる」という専門家の意見もあり、ちょっと心配です。さて、景気の拡大が戦後最長の「いざなぎ景気」を超えたと言われています。いざなぎ景気というのは、1965年から57ヶ月間も続いた高度成長期の景気拡大で、当時「3C」と呼ばれた自動車(カー)、カラーテレビ、クーラーが飛ぶように売れたそうです。データーによれば、66年当時に1%未満であったカラーテレビの普及率が、5年後には40%を超えたというのですから、大変な好景気だと言えます。
そして、2002年から続く現在の景気拡大は、この、いざなぎ景気を超える長さだという訳です。しかし皆さん、私たちに、そんな景気の実感があるでしょうか? 戦後最長と言われても、その割には、街角から景気のよい話は聞こえてきません。それどころか、サラリーマン世帯では「生活はむしろ苦しくなっている」というのが率直な実感ではないでしょうか。ある調査によると、今回の景気拡大を「実感できない」とする人が9割を超える結果となっています。
実感できない理由のひとつに、いざなぎ超えの景気といっても、経済成長はこれまでの成長率とは比較にならないほど低い、ということが挙げられます。いざなぎ景気の場合、名目の経済成長率が年平均18%以上の増であったのに対し、今回の回復局面では1%程度の増に過ぎません。さらに、サラリーマンが景気拡大を実感できない最も大きな理由は、税金や保険料などの負担の増加です。今回の景気拡大の期間中、配偶者特別控除の廃止、年金保険料の引き上げ、定率減税の廃止などが立て続けに実施されています。くわえて、たばこや発泡酒の税金も2度にわたって引き上げられました。サラリーマンの賃金が、容易に上がらないなかで負担ばかりが増えるのだから、家計の可処分所得は減少し、景気拡大の実感がわかないのも当然だと思います。銀行や大企業が史上最高の収益を上げる一方で、その成果に貢献した社員の生活は苦しくなっている、というのはどう考えても理不尽なことです。そして、働けど働けど貧困から抜け出せない「ワーキングプア」と呼ばれる勤労者が増加しており、深刻な社会問題になっています。
今回の景気拡大が、いざなぎ景気と決定的に異なるのは、全体が良くなっているのではなく、勝ち組だけに利益が集中する、言わば「格差のなかの景気拡大」であることです。サラリーマン家計の負担を軽減し、可処分所得の増加をはかることで、個人消費の拡大につながり、社会全体が実感できる真の好景気をもたらすと確信します。
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